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ソウマさんの手記「30年を共にした同性パートナーとの死別」 <闘病篇>
◆カオルの父へのカミングアウト
私一人ではカオルの死と向き合うことができず、相談者を求めてカオルの母や弟に連絡を取ろうとしたが、母、弟、カオルは不仲であったため、「枕元で言い合いになるのは嫌だ」とカオルに止められた。
カオルの両親は離婚しており、カオルと弟は母親に引き取られ、父親とは離れて暮らしていた。
私はカオルの父親が外科医であることを思い出し、カオルの許可をもらいセカンドオピニオンとしてCT画像の診断をお願いした。
カオルの父は「かなり大変」「どうしようもなくなったら腹をくくれ」とカオルに言った。
カオルの父は、病室の環境、医療保険、手術の説明など、親であり医師として出来る限りのことをしてくれた。
何を選択してよいかわからなくなっていた私たちにとって、長年多くのがん患者と接してきた人が身内にいることは大きな支えとなった。
そして、この人になら2人のことを話しても大丈夫かもしれないと思った。私 「お父さんなら理解してくれるかな?」
カオル「え?」(まさかという表情)
私 「私たちは、お互いの成長をサポートしつつ、生涯を共にするつもりで今まで寄り添ってきました。終の住処としての家も建てました。そういったパートナーシップについてご理解いただけますでしょうか?」カオルの父は、2~3秒の沈黙の後、ハッとした表情となり「あるがままに……」とやさしく言ってくれた。
万が一の場合を考え、2人で建てた家のことも詳しく伝えた。
カオルの父は「家の話も聞いておけてよかった」と言ってくれた。
そして、このときのカミングアウトとその後に書いた自筆遺言書が、私たちの最後の共同作品である家を守ってくれることになった。