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ソウマさんの手記「30年を共にした同性パートナーとの死別」 <闘病篇>
◆自宅帰還
腹水もなくなり、ほっそりとした姿になったカオルは、若い頃に戻ったように見えた。とりあえず危機は脱しているはずだが、その白く透き通った綺麗すぎる姿に、もうすぐ逝ってしまうのではないかという不安を覚えた。(亡くなった私の母がそうだった)
だが、そんな私の心配をよそに、カオルは退院翌日から抗がん剤で脱毛してしまった頭にウィッグをかぶって仕事に復帰した。仕事ができるありがたさ、楽しさ、生きていられることの喜びをかみしめているようだった。
退院からの1ヶ月間は、カオルの体調も安定し、2人で買い物に出かけるだけで楽しかった。私たちにとって最後の蜜月だったのだと思う。