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ソウマさんの手記「30年を共にした同性パートナーとの死別」 <闘病篇>
◆残り少ない日々と看護師Nさん
カオルが入院している病棟に入る際、毎回患者との関係を聞かれる。
最初は「同居人です」と答えていた。カオルに私の名前を確認後、病室に入れてもらえることもあれば、親族でなければダメだと押し問答になることもある。特に受付担当が変わると手間取ることが多かった。
そのため、途中からは「家族です」と答えるようにしていた。ある日、いつも担当として付いてくれている看護師のNさんから突然二人の関係について尋ねられた。
看護師Nさん「付き合ってるんですか?」
私 「え?」
看護師Nさん「お二人は付き合っていらっしゃるんですか」
私 「・・・はい」あまりに唐突すぎて、どう答えるべきか一瞬迷ったが、病状がギリギリの今、そばに居続けるためには本当のことを告げるしかない。しかも、この人はもう気づいている。二人の関係を正直に伝ようと思った。
看護師Nさん「何年くらい?」
私 「30年くらいになります」
看護師Nさん「そんなに……。今後はモルヒネなどの投与、その他もあなたが判断してくださっていいんですよ」
私 「そこまでは荷が重すぎます。その判断はご家族の同意なしにはできません」
看護師Nさん「昔、HIVの病棟にいたことがあって、『判断はパートナーに任せます』と書かれたカードが枕元に置いてあったりして、それを見ていいなと思ったんです」
私 「ご理解いただき、ありがとうございます」
看護師Nさん「何かあったら言ってくださいね」パートナーとして認められたという嬉しさの反面、判断を任せると言われても、私一人でカオルの命を背負うのは怖いという思いもあった。
だが、いざというとき、理解ある看護師さんがいることがわかり、心強かった。
次の日からは、そのことが情報共有されたのか、他の看護師さんたちも私をカオルのパートナーとして扱ってくれるようになった。