• けんじさんの死別体験 エピソード002 遺体を警察が持って行ってしまった

    ◆ひろしさんの死の連絡

    2,3日経っても警察からは何の連絡もありませんでした。家に帰っても誰もいないのですが、仕事が終わるとまっすぐ家に帰っていました。前ならお弁当を買って帰ったり、夕ご飯を作ったりしていましたが、誰もいない家で何もせずに、ボーっとしていました。ひろしさんが生前に冗談で、「僕が死んだら誰にも知らせないでね」と言っていたのを思い出しました。ひろしさんとしては、わざわざ「死んだ」と知らせて悲しませるよりも、「最近ひろしさん見ないね~、どうしてるんだろうね~」くらいに言われるほうがいいと思っていたようです。
    そのため、私は、最初は誰にも言わないようにして、家に帰ってひとりでずっと泣いていました。しかし、数日経って、とても耐えられなくなってしまいました。直近まで使っていたひろしさんのスマホは警察が持って行ってしまったので、ひろしさんの古い携帯を起動してみました。ここ数年は私の仕事が忙しく、一緒に飲みに行ったり、ゲイの他の知り合いと一緒に旅行に行ったりすることもなかったので、ひろしさんの交友関係は全くわかりませんでしたが、会話の中でよく名前が挙がっていた人を携帯から調べてみることにしました。するとアドレス帳にその人の電話番号が載っていました。
    そこで恐る恐る私のスマホからその電話番号に電話してみました。しかし、応答はありません。「知らない番号からの電話なんて出ないよな~」と思いながらも何度か繰り返し電話してみました。すると3回目に電話に出てくれました。
    私 「あの~、しげるさんの携帯でよろしいでしょうか?」
    しげる「はい。どなたでしょうか?」
    私 「ひろしさんの相方のけんじと申します」
    しげる「あー、ひろしさんの。何かあったの?」
    私 「実は、ひろしさんが3日前に亡くなりました」
    しげる 「えっ……」
    私 「生前にひろしさんから死んでも誰にも知らせるなって言われていたのですが、私が耐えられなくなってしまって、電話してしまいました。これからどうすればいいでしょうか?」
    しげる「そんなの守らなくていいわよ! よく電話くれました。とりあえず、ぶんちゃんに電話して。ぶんちゃんはすごく仲良くしていたから、ぶんちゃんにはあなたから電話して。それ以外は私から回すから。電話が終わったら詳細を聞くから、また電話してください」
    私 「ありがとうございます。わかりました、ぶんさんの電話番号を教えてください」
    ぶんさんに電話した後、再度しげるさんに電話しました。そして、警察が遺体を持って行っていること、私では身元確認ができないこと、親族を探していることなどを説明しました。