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レポート

【インタビュー】”当事者以外”のロールモデルを目指して。杉山美紗が語るアライアスリートとしての想い

プライドハウス東京では、2022年より「アライアスリート」の輪を広げるべく活動を続けています。

アライ(ally)とは、「同盟、味方」などを表す言葉です。LGBTQ+当事者の味方として共に行動する人たちを総称してアライといい、LGBTQ+当事者もアライになることができます。

アライアスリートは、そのようなアライであることを公言し、スポーツ界から社会を動かすアクションを一緒にしていくアスリートです。プライドハウス東京が主催するイベントや研修に登壇し、自身のSNSでも情報発信を行うなど、精力的な活動を続けています。

今回は、アーティスティックスイミングの世界から引退後、渡米してシルクドソレイユのステージに立つなど、多方面で活動を展開する杉山美紗(すぎやま・みさ)さんにインタビューを行いました。杉山さんはなぜ、アライアスリートになることを決めたのか。アメリカで見た景色やアライアスリート研修で得た学び、今後の活動への思いなどについて伺いました。

 

■プロフィール

杉山美紗/元アーティスティックスイミング日本代表、元シルクドゥソレイユ“O”パフォーマー

神奈川県出身。8歳の頃からアーティスティックスイミングを始め、11歳でオリンピック強化指定選手に。17歳、19歳で日本代表入りを果たし、世界選手権やワールドカップに出場する。2014年に現役を引退。2015年にラスベガスへと移住し、かねてから夢として掲げていたシルクドゥソレイユのパフォーマーとして、7年間ステージに立つ。2021年にシルクドゥソレイユを引退。現在は日本を拠点に、水中モデルとして短編映画やミュージックビデオに出演するなど、表現活動を行う。また、社会貢献活動、スポーツイベントや講演会への登壇など、幅広い領域で活動を展開している。

 

アメリカでの経験をきっかけにアライアスリートの道へ

 

——杉山さんは、アーティスティックスイミングの選手や、シルクドゥソレイユのパフォーマーとして活躍されました。現在は引退し、日本にいらっしゃるそうですが、どのような活動をされているのですか?

日本に帰国して何をするのかは全く決めず、「一度全部手放してみよう」とだけ決めてアメリカから帰国しました。有難いことにたくさんのご縁をいただき、現在は幅広くいろいろな活動に挑戦しています。

例えば、身体表現の仕事としては、水中モデルとして活動。山下達郎「SPARKLE」のミュージックビデオや、コマーシャル、短編映画などに出演しています。身体表現の仕事以外にも、企業や学校での講演、国内の震災等で被災した地域の支援、環境問題の解決を目指す活動など、さまざまな取り組みを行っています。

 

——そうした多彩な活動の中で、2023年に研修を受け、アライアスリートとしての活動もスタートさせました。そもそもなぜ、アライアスリートになろうと思われたのでしょうか。

大きなきっかけは、アメリカでの経験でした。シルクドゥソレイユのパフォーマーの約半数が、LGBTQ+の当事者だったんです。アメリカでは、すべての州で同性婚が認められています。だから、どのような性的指向の人であっても、自由に恋愛をして、家族をつくり、子どもを持つことができる。LGBTQ+当事者の方々が、本当にごく当たり前に幸せそうに生活している環境で過ごしてきたので、私の中ではアライアスリートになることも自然な選択でした。

アメリカではナチュラルにLGBTQ+の方々と生活をしていましたが、日本に戻ってきて、社会の空気の違いを強く実感することとなりました。その中で、日本ではLGBTQ+の何が問題となっているのかを深く知り、当事者も含めたあらゆる人が生きやすい社会をつくるためにどんな活動ができるのか、しっかりと考えたいと感じました。そんなことを思案していた折、フェンシングの元日本代表選手でトランスジェンダー当事者として活動している杉山文野さんのSNSで、アライアスリート研修が開催されることを知りました。直感で「今の私に必要なものはこれだ!」と感じて、その場で研修に申し込んだのをよく覚えています。

 

 

アライアスリート研修で自分自身を振り返ることができた

 

——アライアスリート研修で特に学びになったことは、何でしたか?

本当にたくさんの学びがあり、気づきがありました。なかでも特に印象的だったのが、性のあり方を構成する4つの要素の話です。「性」と聞くと、男性や女性といった生物学的な性別を思い浮かべる方が多いと思いますが、性のあり方を決める要因はそれだけではありません。自身の性のあり方を決める要素として、性自認(こころの性)、性的指向(好きになる性)、性別表現(言葉遣いや振る舞い、ファッションなどで表現する性)、身体構造における性的特徴(自分の性別に関わる身体の特徴)の4つがあります。それらがそれぞれグラデーションをもって個人の中に存在しているため、見た目から性格まで1人として同じ人がこの世界に存在しないように、性のあり方も十人十色であって当然なのです。

そのことを知ったとき、私はふと、自分自身の性のあり方にも疑問を抱きました。これまでは自分は女性を自認していて、恋愛対象も男性だと思っており、その特徴に特に疑いを持つことはありませんでした。しかし、講義を受けて改めて自分の心と向き合ってみると、もしかすると私はバイセクシュアルに近い領域にいるのではないかと感じたんです。とはいえ、まだ女性と恋愛をしたことがないため、自分が本当にそうなのか、確証は持てていません。その意味では、LGBTQ+の「クエスチョン」に近いところにいるのが、今の私なのかもしれません。

そんな風に、これまでは気づいていなかった自分の一面を発見すると、やはり社会をもっとあらゆる人が生きやすいものに変えていきたいという思いが強くなりました。現在の日本社会には、「当事者ではないからLGBTQ+の問題は関係ない」と考える人が多いように感じます。ですが、本当にそうでしょうか。LGBTQ+の当事者は、10人に1人の割合で存在すると言われています。それは、左利きの方が現れる割合と同じです。家族やクラスメイト、チームメイト、会社の同僚、顧客など、私たちの身近に当事者の方がいるかもしれませんし、もしかしたら今後、自分自身が当事者になるかもしれません。「関係ない」と突き放すのではなく、まずは少しでも知ろうとすること。その姿勢こそが本当に大切なのだと、アライアスリート研修を受けて改めて感じました。

 

 

不確かな情報が飛び交う時代だからこそ、学び続けることが大切

 

——2023年度に研修を修了し、アライアスリートになられた後、2024年度の研修も再受講されたと伺いました。

そうなんです。2024年のパリ五輪で、女子ボクシングに出場したある選手に対して国内外で大きな議論を呼びました。メディアやSNSを通じて、彼女の身体的な特徴に関する様々な憶測や間違った情報が拡散しました。彼女は女性カテゴリーに出場するにはふさわしくない身体であるかのような発信が多く見られ、選手本人に対する直接的な誹謗中傷も数多くありました。

また、多くの報道ではトランスジェンダーとDSD(性分化疾患:Disorder of Sex Development または性分化における多様な発達:Differences of Sex Development:)※の区別が丁寧にされないままに報道されていて、一体どれが正しい情報なのか、どのような基準を設けることが競技や選手にとって最適な選択なのかが分からないと感じました。

そうした状況を知る中で、私自身、どのようなスタンスで意見を持つべきなのか、いくら自分で調べて考えても答えがでませんでした。そのため、一度修了はしていたのですが、事務局にお願いをして、2024年度のアライアスリート研修を再受講させてもらいました。何事においても、知識やデータはアップデートされていきます。インターネットを通じて玉石混合の情報を得られる時代だからこそ、LGBTQ+についても、正しい知識を得ようと学び続けることが大切だと思います。

※DSDとは、染色体、性腺、内性器、外性器が多くの人とは異なる型で発達した状態を言います。

 

——多様な分野で活動を展開している杉山さん。アライアスリートとしては、今後どのような活動をしていきたいと考えていますか?

LGBTQ+当事者の方々が生きやすい社会をつくるということは、ひいては障がいの有無や性別、人種に関係なく、誰もが自分らしく生きられる社会をつくるということです。アライアスリート研修を通じてそうしたことを学んだため、今後はまず、学校や企業、プライドハウス東京での講演会やイベントに積極的に参加し、私の想いや考えを発信できたらと考えています。

また、プライドハウス東京と連携して、近い将来、アライアスリート同士の対話と交流の場を設けたいです。毎月1回程度の頻度で集まりを開催することで、活動の中で感じる困りごとを相談したり、役に立った情報を共有したりすることができれば、アライアスリートの活動の輪をさらに広げられる気がしています。私の中に構想はあるので、近いうちに初開催に向けて動いていけたらと思っています。

 

 

当事者以外のアライとして、ロールモデルをつくりたい

 

——杉山さんはアメリカで暮らしていた時間も長いですよね。改めて、「誰もが生きやすい社会をつくる」という観点から見たとき、日米間では何が違うのでしょうか。

大きな違いとして感じるのは、個人主義か否かという点でしょうか。アメリカでは、人種や国籍、宗教、思想など「あなたと私は違って当たり前」という大前提が社会の中に存在しています。LGBTQ+の当事者と自分の性のあり方は違って当たり前で、違いを尊重し合いながら、お互いが望む人生を、好きなように生きればいいと考えている人が多いからこそ、LGBTQ+の当事者を自然に受け入れる人が多く、先進的な取り組みも多数実現しているのだと思います。

日本は、自分と他者の境界線があいまいになりやすい文化がありますよね。それはそれで、空気を読んで、他者の気持ちを察して慮るという日本ならではの良さだと感じていますそうした日本の良さを残しつつも、自分と他者の輪郭を明確に分けて相手を尊重することが日本の中にもっと広がっていくと、あらゆる人が取り残されない社会に一歩近づくのかなと思うことがあります。

 

——先ほど、日本ではLGBTQ+の問題を「自分には関係ない」と線引きしてしまっている人も多いという話もありました。この問題を多くの方に自分事として考えてもらうためには、どのような取り組みが必要だと思いますか?

LGBTQ+の問題に関して、解決に向けて様々なことを考え、発信し、行動している、“当事者以外”のロールモデルをつくることが大切なのではないでしょうか。

実は、私がアライアスリートであることを伝えると、多くのケースで「杉山さんも当事者なんですか?」と聞かれるんです。それはつまり、この社会の中に「LGBTQ+の問題に取り組むのは当事者だ」という認識が根強くあるということ。アライとしての活動に、当事者かどうかは関係ありません。現段階では異性を恋愛対象とする女性だと自認している私が、アライアスリートとして活動する姿を見せることで、より多くの方に問題の内容や本質について知っていただき、活動の輪に加わっていただくきっかけを生み出せたら嬉しいです。

 

 

——最後に、読者へのメッセージをお願いいたします。

最近は、世界各国で政権交代が起きたことで、多様性の実現とはかけ離れたほうへと政治や社会が動き出そうとしている気配を感じます。そうした動きや、それを支持する強い言葉を目にするたびに、とても辛く、悲しい気持ちになります。性のあり方や人種、障害の有無など関係なく、誰もが安心して、自分らしく生きられる社会の実現に向けて、今できることに精一杯取り組んでいきたいです。

この記事を読んでくださった皆さんも、心の中に少しでも「傷つきたくない」「誰かを傷つけたくない」という気持ちがあるのなら、ぜひ私たちの仲間となっていただきたいです。あまり難しく考えずに参加できるような場を企画していけたらと思っていますので、アライアスリートの活動に今後も着目していただけたら幸いです。

 

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