• EN
  • JP

PRIDE HOUSE TOKYO JAPAN 2020 → - プライドハウス東京 -

  • プライドハウス東京
    とは
  • プライドハウスの
    歴史
  • チーム
    メンバー
  • ニュース /
    レポート
  • ムービー
    • 制作ムービー
    • メッセージムービー
  • ダウンロード
  • 支援する

News / Report

  • お知らせ
  • レポート
  • 募集
  • イベント告知
レポート

【アライアスリート・インタビュー①】スポーツの力で、誰もが自分らしい居場所を持てる社会に。元ラグビー日本代表・鈴木彩香の想い

プライドハウス東京(PHT)では、2022年より、「アライアスリート」の輪を広げる活動に取り組んでいます。アライ(ally)とは、「同盟、味方」などを表す言葉。LGBTQ+当事者の味方としてともに行動する人たちを総称してアライといい、LGBTQ+当事者もアライになることができます。アライアスリートは、そのようなアライであることを公言し、スポーツ界から社会を動かすアクションを一緒にしていくアスリートです。

そうしたアライアスリートの育成・輩出にPHTとして取り組みはじめて早3年。今年、アライアスリートの人数が45名になりました。そこで、2025年度は、多様なアライアスリートの存在を知っていただけるよう、インタビュー連載を実施します。全10回にわたり、各アスリートの来歴やアライアスリートになったきっかけ、活動内容などを取材。それぞれの想いをお届けします。

連載1回目は、元ラグビー日本代表の鈴木彩香(すずき・あやか)さんにインタビュー。友人で、ラグビー選手の村上愛梨さんがLGBTQ+当事者として活動していたことをきっかけに、アライアスリートになろうと決めたという鈴木さん。これまでの歩みや、今後の活動に対する想いを聞きました。

 

■プロフィール

鈴木彩香(すずき あやか)/元ラグビー日本代表

小学3年生の頃にタグラグビーと出会い、翌年より本格的にラグビーを開始。18歳未満の強化選手を集めたユースセレクション第1期生に中学2年生で選抜された後、高校2年次にはU23日本代表選手に抜擢され、7人制ラグビー、15人制ラグビーで日本代表としてのキャリアをスタート。女子ラグビーのワールドカップに4回の出場経験があり、2016年にはリオデジャネイロオリンピックにも出場。イングランドやニュージーランドでも選手生活を経験する。2022シーズンで現役を引退。現在は子育てをしながら、「WOMEN’S RUGBY COMMUNITY」での女子ラグビーの普及・発展に向けた活動や試合解説などを行う。

 

現役引退から新たなステージへ。3つの活動で女子ラグビー界を支える

——鈴木さんは2022年のシーズンをもって、現役のラグビー選手を引退されました。現在はどのような活動をしているのですか?

鈴木:プロアスリートとして過ごした4年間の経験を社会に還元すべく、大きく3つの活動に取り組んでいます。1つ目が、コロナ禍の頃に凸版印刷株式会社(現・TOPPAN ホールディングス株式会社)の協力を得て立ち上げたコミュニティ「WOMEN’S RUGBY COMMUNITY」の運営です。このコミュニティでは、WebサイトやSNSでの情報発信、「多様性」をテーマとした企業研修の開催、イベントやラグビー教室の開催など、女子ラグビーの普及と発展を目指した活動を展開しています。2つ目が、女子ラグビーの日本代表戦や男子ラグビーのトーナメント戦の試合解説、インタビュアーの仕事です。3つ目が、女子ラグビーチームのクラブアドバイザーとしての活動です。

最近は、「女子スポーツを通じた社会貢献」をテーマに、女子アスリートのキャリア開発プログラムを企画しています。特に女子ラグビー界では、選手が競技に熱中するあまり、怪我をしやすくなってしまったり、生理のトラブルなど女性ならではの問題を抱えやすくなったりしています。また、現役時代に競技を優先してきたがために、引退後、セカンドキャリアの形成に悩んでしまう人も少なくありません。こうした課題は、女子ラグビーだけでなく、女子スポーツ全般に共通する部分も多い。そこで、女子スポーツの課題解決につながるような教育プログラムを作れないかと考え、日本ラグビーフットボール協会などと相談しながら、企画開発を進めているところです。

 

—―小学2年生の頃からラグビーをプレーしてきたという鈴木さん。ラグビーのどのような点に魅了されてきたのでしょうか。

鈴木:スキルや得意領域、考え方、国籍、バックグラウンドなど、どこをとっても同じところがない多様な仲間とともに、1つの目標に向かって身体を使ったハードワークをする。そして、各選手が強みを発揮してプレーしつつ、お互いを活かしあうことではじめて得点につながっていく。そうした競技特性に魅力を感じています。手にした勝利をチームメンバーと一緒に喜びあえる瞬間がおもしろくて、長くラグビーを続けることができたのだと思います。

 

アライアスリートを目指したのは、仲の良い友人・村上愛梨さんがきっかけ

——アライアスリートになろうと思ったきっかけを教えてください。

鈴木:きっかけは、友人の村上愛梨さんです。村上さんはLGBTQ+当事者としてさまざまな活動に取り組んでいます。その姿を見る中で、次第に「誰もが自分らしくありのままで、自分の安心できる居場所を得られる社会」にしていきたい、そのためにも私自身が何かできることで協力・貢献したいと思うようになりました。そして、LGBTQ+について、この機会に改めて正しく理解を深めたいとも感じました。そこで、村上さんにプライドハウス東京のアライアスリート研修を紹介してもらい、受講することを決めたのです。

 

村上愛梨さんインタビュー記事
【インタビュー】LGBTQ+当事者として紡ぐ言葉が、誰かを支え、社会を変えるきっかけになれば。アライアスリート 村上愛梨を突き動かすもの

 

—―研修で最も学びになったことは何でしたか?

鈴木:子どもの頃からラグビー界を中心にLGBTQ+当事者の友人・知人が周囲にいたため、私にとっては「多様な性的指向・性自認がある」ということは当たり前の認識でした。ですが、研修では、「アウティング(※)」などの知らない言葉とたくさん出会いました。それらをしっかりと学ぶことができて、良かったと感じます。特にアウティングは、LGBTQ+当事者との関係性の中だけでなく、そのほかの人間関係の中でも知らず知らずのうちにやってしまうことがあるかもしれません。私のこれまでの行動が、誰かを傷つけてしまっていたかもしれない。自分自身のおこないを振り返り、改めて「この社会の中で多様な人と一緒に生活をしているのだ」と認識できた、とても貴重な時間となりました。

※アウティング:本人の性的指向や性自認など性のあり方を、同意なく第三者に暴露すること。

 

—―ちなみに、今日は、鈴木さんがアライアスリート研修を受講するきっかけとなった村上さんも、プライドハウス東京のスタッフとしてこの取材に同席してくれています。2人はいつ頃出会い、仲良くなったのか、教えていただけますか?

村上:出会いは……、突然です。

—―どういうことですか(笑)。

村上:冗談です(笑)。私と鈴木さんは同い年なのですが、たしか出会いはお互いに25歳のときだったと思います。だから、今から約10年前かな?

鈴木:村上さんはバスケットボールからの種目転向でラグビー選手となったので、当時、他種目から転向してきた選手を育成する強化合宿に参加していたんです。その合宿では、参加選手の練習を、私が当時所属していた「アルカス熊谷」というチームのグラウンドで実施していました。すごく体格の良い、大きな選手がいるなと思っていたら、村上さんが私に挨拶してくれて。積極的に話しかけてくれたことから、仲良くなっていきました。そういえば、初対面で私の顔のことを「じゃがいものメークインに似ている」って言っていたよね(笑)。おもしろい人だなと思ったことを、今でも鮮明に覚えています。

村上:長期間の合宿でハードな練習をこなしていたので、そんなことを言ったのかもしれない(笑)。あんなにきつい練習を鈴木さんはいつもこなしているのかと、驚きました。それ以来、私が鈴木さんの背中を追いかけて、仲良くなったんです。

—―鈴木さんと村上さんは、同じチームでプレーしたことはあるのですか?

村上:実はありません。日本選抜のときにラスベガスで一緒にプレーしたことがあるくらいですね。

鈴木:村上さんがお尻を出しちゃった試合ね(笑)。

村上:そう。相手チームの選手にタックルされて、その選手の手がズボンにかかってしまって、ペロンって(笑)。あれは完全に事故でした。

鈴木:でも、合宿はすごく楽しかったよね。村上さんとチームメイトになったことはないのですが、日頃から本当に仲良くしてもらっていて、私の30歳の誕生日のときには、パーティーの準備を幹事として仕切ってくれたんですよ。競技中の私の写真を使ってTシャツを作ってくれたり、30人ほど招待客を呼んでくれたり。

村上:「No」が言えないタイプなので引き受けただけ……、と正直に言えない雰囲気になっていますね(笑)。パーティーの準備、かなり大変だったので、もうやりません!(笑)

 

イングランドでの選手生活で感じた日英社会の違い

——ところで、鈴木さんは、イングランドのチームでプレーした経験もあると聞きました。

鈴木:そうなんです。2020年11月に渡英し、WASPS LADIESで数カ月間プレーしていました。

 

——多様性の観点で、イギリスと日本の違いを感じた瞬間はありましたか?

鈴木:イギリスでは、同性カップルの存在が、社会の中で当たり前のものになっていました。例えば、WASPS LADIESでは、試合に初出場した帰りのバスの中で、他の選手から「あなたが好きになるのは女性?男性?」と聞かれたことがあります。また、サッカーなどのスポーツ界を含め、いろいろなところで同性のパートナーがいる方などに出会いました。LGBTQ+当事者の方を特別視するのではなく、多くの友人の中のひとりとして認識し、同性パートナーの存在についても、あくまでも「人と人との付き合い方のひとつ」として捉えている。そんな社会の空気を感じましたね。少なくとも当時、私の周囲では偏見や差別に出会ったことはありません。

イギリスでは、自分の生き方に誇りを持っている人が多いんです。その姿がすごく眩しくて。世の中にはいろいろな人がいて、いろいろな考え方があるという前提を理解し、尊重している社会だからこそ、現地では多様なバックグラウンドを持つ人たちが居場所を持ち、生き生きと活躍しているのだと思います。

 

——イギリスでは、性的指向や性自認に関して、かなりオープンに話せる空気があるのですね。

鈴木:そうですね。当時一緒にプレーした選手や知り合いになった選手とは、今もSNSで繋がっているのですが、先日はLGBTQ+当事者でお付き合いをしていたイングランド代表とアイルランド代表の女子ラグビー選手が、2人で結婚式を挙げている様子を投稿していて感動しました。青空の下でウェディングドレスを着て笑う2人の姿は、本当に美しかったです。そして、自分たちの生き方にプライドを持っている2人は、とてもかっこいいなと感じました。

 

——日本では、まだまだ性的指向や性自認をオープンにしづらい環境があるかと思います。イギリスのように多くの方が安心して自分らしく生きられる社会にするためには、何が必要だと思いますか?

鈴木:心理的安全性を保ちながら、さまざまな話題を率直に話し合える雰囲気づくりが欠かせないのではないでしょうか。最近の日本は、あらゆる場面で発言に気を遣う社会になっていると感じます。どのようなテーマでも、自分の発した言葉が意図の通りに伝わらなかったり、思わぬ形で炎上してしまったりすることが多々あります。あるいは、本当は社会の中に多様な人がいるにも関わらず、特定の誰かの発言がきっかけとなって、ひとつの物事に対する行動ややり方が急速に変わってしまうこともありますよね。「自分の言動が社会にどういう影響を与えるか分からないから、言いづらい。行動に移しづらい」と感じている方は、私自身を含めてかなり多いように思います。

自分らしく、ありのままでいること。自分らしく生き、表現すること。それが当たり前にできる社会になったほうがいいのではないかと思っています。そのためにも、もっとオープンにさまざまな話題について話せる空気が必要で、この社会に属する私たちひとりひとりが意識を変えていかなければならないなと感じます。

 

スポーツの力でより良い社会の実現を目指したい

——アライアスリートとして、今後やりたいことなどがあればお聞かせください。

鈴木:人と異なる部分があるために、周囲から受け入れてもらえず悩んでいたり、や「アンコンシャスバイアス」などに関連して苦しんでいたりする人がいるのであれば、多様な人がいるラグビー界で培ってきた経験を活かして、自分自身ができる活動をしていきたいです。

私は、ラグビーを通じて多様な人と出会い、彼ら・彼女らに自分のことを受け入れてもらうことで、人生が豊かになる経験をしました。そうした経験を、もっと多くの方に手にしてほしいと思います。そして現在、「居場所がない」と感じている方々の力になりたいとも思っています。

試合を観戦して非日常の気分を味わえたり、選手が頑張っている姿を見て、感動や勇気をもらえたりするスポーツの価値は、多くの人に受け取ってもらえるものだと私は信じています。スポーツが持つパワーを活かせば、誰もが自分らしい居場所を持てる世界の実現も夢ではないはずです。ラグビー界をはじめとしたさまざまな選手とともに、より良い社会の到来に貢献できたらと思います。

関連
ニュース/
レポート

  • レポート

    【座談会・後編】小さな行動から社会を変えていく。デフアスリート3名が「アライアスリート研修」を受けて思うこと

    プライドハウス東京では現在、アライアスリートにライフストーリーやアライ(※1)になろうと思ったきっかけ、アライアスリート研修を受講して学びになったこと、今後の活動への想いなどについて伺うインタビュ...

  • レポート

    【座談会・前編】聴覚障害のある選手が参加するデフスポーツとは?魅力や課題を語り合う

    プライドハウス東京では、2022年より「アライアスリート」の輪を広げるべく活動を続けています。 アライ(ally)とは、「同盟、味方」などを表す言葉です。LGBTQ+当事者の味方として共に行動する...

  • レポート

    【インタビュー】”当事者以外”のロールモデルを目指して。杉山美紗が語るアライアスリートとしての想い

    プライドハウス東京では、2022年より「アライアスリート」の輪を広げるべく活動を続けています。 アライ(ally)とは、「同盟、味方」などを表す言葉です。LGBTQ+当事者の味方として共に行動する...

  • facebook
  • twitter
  • instagram
  • お問い合わせ
  • プライバシーポリシー
  • 法人情報

プライドハウス東京

Copyright Pride House Tokyo all rights reserved.